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<<   作成日時 : 2009/03/13 23:57   >>

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 きのう、マリーちゃんにチョコレートをもらった。

 幼稚園の帰りのバスから降りると、マリーちゃんはニコニコしながら、いいものあげると笑ってた。

 ぼくは、真っ赤になってうつむいて、小さな小さな声でありがとうっていった。

 うちに帰ってからママにチョコをもらったことをいうと、すこしだけ目を丸くしてから、よかったねって、ぼくをなでてくれた。

 本当はバレンタインデーが、チョコをおくる日だとは決まってないと、ママは晩ご飯のときにいったけど、好きな人になにかを贈るにはいいきっかけなんだともいった。

「ぼくも、マリーちゃんになにかあげたい!」

 といったら、それじゃ来月、ホワイトデーにでも返してあげなさいってママはにっこり笑った。


 それからしばらくして、ママと大型スーパーに行ったとき、いろいろ見ていると、特設のホワイトデーコーナーの隅から突然ささやき声が聞こえたんだ。

「YO! 女の子にモテたいなら、ぼくを手に取るんだぜ」

 見てみると、やたらと大きなロリポップキャンディが、売れ残ってホワイトデーコーナーのかごの端で転がっていた。

 ぼくは、おそるおそる青くて派手なその棒つきキャンディを手にとってみた。

 かごの下をのぞいてみたけど、CDも機械も見当たらない。

 すると、手にしたキャンディが急に咳ばらいをしたので思わず放してしまった。

「HA! HA! HA! おどろいたかい? やぁ、おれはポップくんだ。よろしくな」

 あ、飴がしゃべった……。

 近くにいた店員さんと目が合ったけど、なにも驚いてない。というか聞こえてないみたいだ。

 おそるおそるキャンディに質問してみると、ぼくにしか聞こえないように話してるっていいだした。

 なんだこれ、すごいや。

 ぼくは夢中でポップくんを買い物かごに持っていった。


 うちに帰ると、ママがいないときをみはからって、ぼくはポップくんに話しかけた。

「きみ、キャンディの妖精さん?」

「まあな、似たようなもんさ。これからホワイトデーまでの三日間お世話になるぜ。みっちり、モテるコツを教えてやるよ」

 ポップくんは、なんだか嬉しそうに鈴の音みたいに笑った。

「ぼくさ、女の子がよくわかんないんだ。このまえだって、マリーちゃんはサクラ組の健くんとばっかり遊んでいて、砂場に来てくれなかったんだよ」

「OH! それはな、たぶん照れているのさ。それに女心は秋の空のように変わりやすいんだ。荒波のような女の子の気持ちを読んでこそ男なんだぞ」

 ぼくは、ポップくんのいうことがよくわからなかったけど、すごく頼もしい気がした。

 勇気のないぼくには、こころ強い味方だ。


 それから三日間、ポップくんと、たくさんの話をした。

 ほとんど女の子のことばかりだ。

「わかるか、女の子は男の子たちが遊んでいるのがたまらなく楽しそうに見えるんだ。まぜてくれといわれたら、めんどくさそうと思ってもあんまり冷たくするもんじゃないんだぜ」

「だってー」

「だっても、くそもあるか。女の子にはサービスだ。優しさだ。もちろん間違ったことには厳しさも必要だがな」

 そういえば、だいぶ前のことだけど、ぼくはモモ組の理佐ちゃんを泣かしてしまったことがある。

 マリーちゃんが仲間はずれにされているのを、見てられなかったから、つい悪口を言ってしまったんだ。

 だけどそのあとがよくない。モモ組の女の子集団から総攻撃されて逆にぼくも泣かされてしまった。

 それから女の子がちょっとコワイし、よくわかんない。

 ポップくんは言う。

 やさしさときびしさがこんざいしてこそ男だと。

 女の子を大切にするのと甘やかすのは違うんだと。

 そうだよね。やっぱり間違ってないよね。

「ところで、ポップくんは、なんでぼくに話しかけたの?」

「モテなさそうだったからだ」

「えー、そんなぁ」

「嘘だ。勇気だよ」

「ゆうき?」

「そうだ勇気だ。話すことってのは勇気なんだ。伝えるってことは常に勇気だ。おれができるのは話すことだけ。おれの声が聞こえたおまえには、勇気をもってもらいたかったんだ」


 そして、ホワイトデーが来た。

 きのうからそわそわしてたまらない。

 幼稚園がおわって、家にいったん帰ってから、昨日ママがきれいなつつみ紙に巻いてくれたポップくんを持って、マリーちゃんの家に向かった。

「さて、これでお別れだな、相棒。おれはすみやかに消えるぜ。もう、おまえには勇気があるのがわかったしな」

「さびしいよ、ポップくん。これでいいの? マリーちゃんには、違うものをあげてもよかったんだよ」

「これでいいんだ。オレは飴だからな。飴には飴の仕事がある。だれにでもやるべきことがあるんだ。おまえはおまえの勇気を示せ」

「うん」

 それからもう、話しかけてもポップくんはこたえてくれなかった。

 ぼくがチャイムを押すと、マリーちゃんが玄関ドアをあけて、顔を出した。

 ぼくがもぞもぞしていると、マリーちゃんのママが寄っていきなさいと、中へいれてくれた。

 だけど、マリーちゃんをまえにしたら、急に気持ちがしぼんでしまう。

 あれほど気合が入っていたのに、あっというまに勇気は消えてしまった。

 顔があつくなってきた。

 ことばが出なくなって、泣きそうになり、ぼくはポップくんのつつみ紙を見た。

 一瞬だけボップくんの陽気な笑い声が聞こえた気がして、僕は勇気をふりしぼった。

 そして――。

 すこしきょとんとしたマリーちゃんだったけど、笑顔で受け取ってくれたんだ。

「ありがとう」

「どういたしまして」

 ありがとうって、いい言葉だ。


 それからぼくは、マリーちゃんの家で、しばらく遊んでから帰った。

 帰りぎわ、ぼくはふと見たキッチンのたなに、ポップくんが置かれているのを見た。そして驚いた。良く見ると、となりには、同じ大きさで色違いのピンクのキャンディがあったのだ。

 あれ、これは、偶然なのかな。

 いや、そうか。

 ぼくはなんとなくわかった気がした。

 たぶん、ポップくんも勇気をふりしぼってぼくといっしょに会いにきたのかもしれない。

 さようならポップくん。そして、ありがとう。

 忘れないYO!











つるさんが主催する、ホワイト・デー短編競作企画に参加してみました。
つるさんのブログ「ハキダメにつる



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大人な話が多いだろうから、かぶらないように、子供な話にしてみた。

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(C) 2009 Homura

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コメント(22件)

内 容 ニックネーム/日時
爽やかな話でした。
楽しませてもらいました。

ポップくん、女心も子供の心理も知ってる、凄い飴だ。
そんじゃそこらの甘い飴じゃないね。
飴と鞭をつかいわけ
飴だけに飴をしゃぶらせたってわけだ。

あー。おいらにも、ポップくんみたいなやつが現れてくれてたら、人生かわっただろうなー。
見習猫シンΨ
2009/03/14 01:10
>見習猫シンΨさん。
はじめまして。
どうもありがとうございます。
コメントしづらい、とっかかりの無い話で申し訳ないです。
でも、こんな口うるさい飴は嫌かもしれないですよ(笑)
火群
2009/03/14 01:33
ポップくん、スゴイよ!
最初は「うさん臭せー」思ったけど(笑)
こんなに可愛い話で来られるとは意外でした。
久々の新作、とっても楽しめたYO!
ia.
2009/03/14 01:57
>ia.さん。
>>「うさん臭せー」
( ´艸`)わーい、褒められたー(笑)
どうもありがとう。
いやー、久しぶりなんで、とりとめのない話に終始してしまいましたYO!
火群
2009/03/14 02:27
ちょっ!幼稚園キター!
ポップくんのネーミングにやられました。機をてらったわけでもないのにめっちゃインパクトありました。
ポップくんの「そうだ勇気だ〜」のところのセリフが読ませます。なんだろ。その前後がいいからか。すーと入った。
個人的には、ポップくんとぼくの濃密な三日間も読みたかったな。
そしてあそこ泣けました。ポップくんがこたえてくれなくなったところ。突き放されたような気がして胸がしくっとしました。
なんかこういう感じ好きだー。マゾじゃねえし。
あ、取り繕ったように、
競作に参加してくださってありがとうオセー
つる
2009/03/14 02:33
>つるさん。
こんばんは。
……でもただ一つ違っていたのは……奥さまはマゾだったのです。そうか、奥様はマゾか(^ω^)
まぁ、それはともかく(笑)
かぶらないことと、インパクトのみなんで、ちょっとフワフワした出来で、まいっちゃったんですけどね。
いやいや、こちらこそ書く機をもらっちゃってありがとう。
火群
2009/03/14 03:00
メルヘンや〜子供の世界を上手く掴んでます。
そしてポップくん自身も勇気を振り絞って
会いに来たんだっていう終わり方。
ただもんじゃありませんねぇ、やっぱり火群さん。

火群さんも今日はポップくんのお世話になるのかな?

2009/03/14 07:20
ごめん、不覚にもちょっと泣いた(笑)
俺こういう話弱いんですYO^^;
寄生獣を思い出しちゃったんですよねぇ。
ミギー……

やっぱ火群作品はいい!
レイバック
2009/03/14 16:32
最後、ふられちゃうのかと心配したけど
ハッピーエンドでほっこり来ました!
ポップくん、いかしてたYО!

しかし、羨ましい。自分の幼少の頃にポップ君がいたら
モテたかもしらん。
銀河系一朗
2009/03/14 17:07
キャンディがしゃべってる!!
火群さんの作品は、なんだかいつも発想が自由な感じがして、読んでいて楽しいYO!
(↑乗ってみました^^;)

かわいらしい少年ですね。ぼくもなんとなく恋の応援をしたくなっちゃいます(^-^)たぶん、ポップ君ほどのアドバイスはできませんが(笑)
shitsuma
2009/03/15 19:59
>舞さん。
メルヘン大好き火群です。こんばんは。
パソコンの壁紙がクマのキャラクターです。
もちろん、ただもんです。

いやー、もちろん盛大にキャンディ、その他、ばら撒いたですよ。
大ハズレですよ(泣)
火群
2009/03/16 01:41
>レイバックさん。
おぅ! グッジョブ涙腺!
寄生獣かぁ、俺も好きですよ。
あれ深いからなぁ。ミギー……

どうもありがとう。
火群
2009/03/16 02:06
>銀河系一朗さん。
さすがにメルヘンなんで、バッドでデンジャラスなエンドには出来ねぇですYO。
普通のSSなら、斜め上展開させるけど^^

やっぱ、大事なことを相談できたり、助言してくれたりする相手がいるってことはホント幸せなことですよネ。
火群
2009/03/16 02:14
>shitsumaさん。
発想がフリーダムな火群です。こんばんは。
文才無いので、あの手この手で書くしかないのさ♪

shitsumaさんはモテそうだなぁ。おれは、ポップくんに、恋の仕方のイロハを教えてもらいたいよ(泣)
火群
2009/03/16 02:30
可愛らしい話ですねー。なるほど、「寄生獣」にも影響受けてますか。私も大好きなんですよ。
長らく更新してないので心配してましたが、どうやら杞憂だったようですね。
アッキー
2009/03/16 23:43
楽しかったYO!!
なんかほんわかするお話でした。

飴が胡散臭く話す辺り、火群さんらしいなぁなんて思ったり。
初めて火群作品を拝読させていただいたのも、短編競作のバレンタインの話でした。あの時の胡散臭い神様が印象に残っていたのかもしれません。w

普段の火群さんも、こんな感じのオッサ……じゃなくて素敵な男性なんですかねぇ。

また遊びにくるYO!!!
たろすけ(すけピン)
2009/03/17 01:50
>アッキーさん。
心配かけまして、すいません。
年初からちょっと仕事が忙しいっす。
オレは頭がメルヘン状態だけど、メルヘンな話はムズカシイですねー。
火群
2009/03/19 02:29
>たろすけ(すけピン)さん。
ありがとうございます。
うさんくさい話は大得意ですので♪
俺? 俺は、いたって、のほほんとした男ですYO。
…オッサ? 一体なんの話ですか。あいさつですか。オッハー、みたいな。それではオッサー、また来てネ。
火群
2009/03/19 07:59
ポップくんは女性受けする甘い言葉を沢山知ってそうですね。飴だけに( ̄ー ̄)ニヤリッ

URL
2009/03/19 12:06
>鯨さん。
まぁ、飴だけになぁ。
そう、あれだ、鞭にも喋らせてみるかな。
かなりドSな助言してくれそうだ…^-^
火群
2009/03/19 20:49
いなくなってもポップくんの意思は、主人公に受け継がれているわけですね。

さっきヒカルの碁読んでたんで、なおさらそう感じてしまいます(笑)

きっと主人公は将来ファンキーなキャンディになることでしょう。
・・・・・・違うかぁ!(笑)
孫琳
2009/03/20 00:37
>孫琳さん。
ヒカルの碁か。懐かしい。
コミックスはないが、連載は読んだなぁ。しかし、ああいう“スタンド”はいいものやら、悪いものやら(笑)

あれだ、将来、明治製菓にでも勤めるんじゃないかな。それともカンロとかサクマとか、それも違うか(笑)
火群
2009/03/22 10:36

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