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きのう、マリーちゃんにチョコレートをもらった。 幼稚園の帰りのバスから降りると、マリーちゃんはニコニコしながら、いいものあげると笑ってた。 ぼくは、真っ赤になってうつむいて、小さな小さな声でありがとうっていった。 うちに帰ってからママにチョコをもらったことをいうと、すこしだけ目を丸くしてから、よかったねって、ぼくをなでてくれた。 本当はバレンタインデーが、チョコをおくる日だとは決まってないと、ママは晩ご飯のときにいったけど、好きな人になにかを贈るにはいいきっかけなんだともいった。 「ぼくも、マリーちゃんになにかあげたい!」 といったら、それじゃ来月、ホワイトデーにでも返してあげなさいってママはにっこり笑った。 それからしばらくして、ママと大型スーパーに行ったとき、いろいろ見ていると、特設のホワイトデーコーナーの隅から突然ささやき声が聞こえたんだ。 「YO! 女の子にモテたいなら、ぼくを手に取るんだぜ」 見てみると、やたらと大きなロリポップキャンディが、売れ残ってホワイトデーコーナーのかごの端で転がっていた。 ぼくは、おそるおそる青くて派手なその棒つきキャンディを手にとってみた。 かごの下をのぞいてみたけど、CDも機械も見当たらない。 すると、手にしたキャンディが急に咳ばらいをしたので思わず放してしまった。 「HA! HA! HA! おどろいたかい? やぁ、おれはポップくんだ。よろしくな」 あ、飴がしゃべった……。 近くにいた店員さんと目が合ったけど、なにも驚いてない。というか聞こえてないみたいだ。 おそるおそるキャンディに質問してみると、ぼくにしか聞こえないように話してるっていいだした。 なんだこれ、すごいや。 ぼくは夢中でポップくんを買い物かごに持っていった。 うちに帰ると、ママがいないときをみはからって、ぼくはポップくんに話しかけた。 「きみ、キャンディの妖精さん?」 「まあな、似たようなもんさ。これからホワイトデーまでの三日間お世話になるぜ。みっちり、モテるコツを教えてやるよ」 ポップくんは、なんだか嬉しそうに鈴の音みたいに笑った。 「ぼくさ、女の子がよくわかんないんだ。このまえだって、マリーちゃんはサクラ組の健くんとばっかり遊んでいて、砂場に来てくれなかったんだよ」 「OH! それはな、たぶん照れているのさ。それに女心は秋の空のように変わりやすいんだ。荒波のような女の子の気持ちを読んでこそ男なんだぞ」 ぼくは、ポップくんのいうことがよくわからなかったけど、すごく頼もしい気がした。 勇気のないぼくには、こころ強い味方だ。 それから三日間、ポップくんと、たくさんの話をした。 ほとんど女の子のことばかりだ。 「わかるか、女の子は男の子たちが遊んでいるのがたまらなく楽しそうに見えるんだ。まぜてくれといわれたら、めんどくさそうと思ってもあんまり冷たくするもんじゃないんだぜ」 「だってー」 「だっても、くそもあるか。女の子にはサービスだ。優しさだ。もちろん間違ったことには厳しさも必要だがな」 そういえば、だいぶ前のことだけど、ぼくはモモ組の理佐ちゃんを泣かしてしまったことがある。 マリーちゃんが仲間はずれにされているのを、見てられなかったから、つい悪口を言ってしまったんだ。 だけどそのあとがよくない。モモ組の女の子集団から総攻撃されて逆にぼくも泣かされてしまった。 それから女の子がちょっとコワイし、よくわかんない。 ポップくんは言う。 やさしさときびしさがこんざいしてこそ男だと。 女の子を大切にするのと甘やかすのは違うんだと。 そうだよね。やっぱり間違ってないよね。 「ところで、ポップくんは、なんでぼくに話しかけたの?」 「モテなさそうだったからだ」 「えー、そんなぁ」 「嘘だ。勇気だよ」 「ゆうき?」 「そうだ勇気だ。話すことってのは勇気なんだ。伝えるってことは常に勇気だ。おれができるのは話すことだけ。おれの声が聞こえたおまえには、勇気をもってもらいたかったんだ」 そして、ホワイトデーが来た。 きのうからそわそわしてたまらない。 幼稚園がおわって、家にいったん帰ってから、昨日ママがきれいなつつみ紙に巻いてくれたポップくんを持って、マリーちゃんの家に向かった。 「さて、これでお別れだな、相棒。おれはすみやかに消えるぜ。もう、おまえには勇気があるのがわかったしな」 「さびしいよ、ポップくん。これでいいの? マリーちゃんには、違うものをあげてもよかったんだよ」 「これでいいんだ。オレは飴だからな。飴には飴の仕事がある。だれにでもやるべきことがあるんだ。おまえはおまえの勇気を示せ」 「うん」 それからもう、話しかけてもポップくんはこたえてくれなかった。 ぼくがチャイムを押すと、マリーちゃんが玄関ドアをあけて、顔を出した。 ぼくがもぞもぞしていると、マリーちゃんのママが寄っていきなさいと、中へいれてくれた。 だけど、マリーちゃんをまえにしたら、急に気持ちがしぼんでしまう。 あれほど気合が入っていたのに、あっというまに勇気は消えてしまった。 顔があつくなってきた。 ことばが出なくなって、泣きそうになり、ぼくはポップくんのつつみ紙を見た。 一瞬だけボップくんの陽気な笑い声が聞こえた気がして、僕は勇気をふりしぼった。 そして――。 すこしきょとんとしたマリーちゃんだったけど、笑顔で受け取ってくれたんだ。 「ありがとう」 「どういたしまして」 ありがとうって、いい言葉だ。 それからぼくは、マリーちゃんの家で、しばらく遊んでから帰った。 帰りぎわ、ぼくはふと見たキッチンのたなに、ポップくんが置かれているのを見た。そして驚いた。良く見ると、となりには、同じ大きさで色違いのピンクのキャンディがあったのだ。 あれ、これは、偶然なのかな。 いや、そうか。 ぼくはなんとなくわかった気がした。 たぶん、ポップくんも勇気をふりしぼってぼくといっしょに会いにきたのかもしれない。 さようならポップくん。そして、ありがとう。 忘れないYO! 了 つるさんが主催する、ホワイト・デー短編競作企画に参加してみました。 つるさんのブログ「ハキダメにつる」 ――――――――――――――――――――― 大人な話が多いだろうから、かぶらないように、子供な話にしてみた。 ――――――――――――――――――――― (C) 2009 Homura |
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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爽やかな話でした。 |
見習猫シンΨ 2009/03/14 01:10 |
>見習猫シンΨさん。 |
火群 2009/03/14 01:33 |
ポップくん、スゴイよ! |
ia. 2009/03/14 01:57 |
>ia.さん。 |
火群 2009/03/14 02:27 |
ちょっ!幼稚園キター! |
つる 2009/03/14 02:33 |
>つるさん。 |
火群 2009/03/14 03:00 |
メルヘンや〜子供の世界を上手く掴んでます。 |
舞 2009/03/14 07:20 |
ごめん、不覚にもちょっと泣いた(笑) |
レイバック 2009/03/14 16:32 |
最後、ふられちゃうのかと心配したけど |
銀河系一朗 2009/03/14 17:07 |
キャンディがしゃべってる!! |
shitsuma 2009/03/15 19:59 |
>舞さん。 |
火群 2009/03/16 01:41 |
>レイバックさん。 |
火群 2009/03/16 02:06 |
>銀河系一朗さん。 |
火群 2009/03/16 02:14 |
>shitsumaさん。 |
火群 2009/03/16 02:30 |
可愛らしい話ですねー。なるほど、「寄生獣」にも影響受けてますか。私も大好きなんですよ。 |
アッキー 2009/03/16 23:43 |
楽しかったYO!! |
たろすけ(すけピン) 2009/03/17 01:50 |
>アッキーさん。 |
火群 2009/03/19 02:29 |
>たろすけ(すけピン)さん。 |
火群 2009/03/19 07:59 |
ポップくんは女性受けする甘い言葉を沢山知ってそうですね。飴だけに( ̄ー ̄)ニヤリッ |
鯨 URL 2009/03/19 12:06 |
>鯨さん。 |
火群 2009/03/19 20:49 |
いなくなってもポップくんの意思は、主人公に受け継がれているわけですね。 |
孫琳 2009/03/20 00:37 |
>孫琳さん。 |
火群 2009/03/22 10:36 |
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