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zoom RSS 『世界が終わるまでは』 (1)

<<   作成日時 : 2009/04/22 23:59   >>

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 その日、米国のNASA(アメリカ航空宇宙局)が巨大な物体を宇宙に観測した。

 突然宇宙空間に現れたとしか考えられない、その物体の推定質量は六十万トン。

 全長が三百メートル以上という、巨大隕石のようなものが、地球への軌道を描いて飛来していたのだ。

 物体はすでに太陽系に侵入しており、どうやら地球への衝突はまぬがれない。

 こんなものが地上に落ちたなら、直径五キロ以上、深さ四百メートル級のクレーターができてしまう。落ちた国は壊滅し、おそらく五十億トンもの土砂が吹き上がって、地球の気候は予想不能の超大変動をおこしてしまうだろう。

 そうなったら世界も破滅である。

 海上に落ちたら、高さ数十キロの高波が発生し、落ちた場所にもよるが、地球上のほとんどの都市が壊滅的被害をうける……。

 三時間後、混乱するNASAは、軌道計算から激突ポイントを割り出した。

 そこは……。





「な、なんだって! と、東京!?」

 日本国、首相官邸に入ったその一報はとんでもないものだった。

「じょ、冗談じゃない! 三日後の四月一日、東京に謎の物体が衝突するだと!」

 阿藤総理大臣は、驚愕して机を叩いた。

 悪鬼の形相で机の書類を投げ捨て、つづけて狂ったように頭をぶつける。

「ありえん! ありえん! ありえん! なぜ今までわからなかった!」

 米国からの緊急連絡は、最悪のデータを提示していたのだ。

 NASAは突然現れたと報告しているらしい。

「お、お気をたしかに、総理……」

 首相秘書官がうしろから声をかけると、阿藤総理は顔面を歪ませて、ひたいに青筋をたてながら睨み付けた。

「気を確かにしてられるか! べらんめぇ、こんちくしょう! 俺のうしろに立つなぁ!」

 首相秘書官は、びくりとして遠ざかった。

 総理の顔には完全に狂気の色が浮かんでいたのだ。

 秘書官は仕事を思い出したと慌てて執務室を退散した。

 阿藤総理は、きっぷの良い話し振りや、サブカルチャーや漫画に理解があることで、若者などから支持をあつめて首相になった人物である。

 それだけに頭は柔らかく、危機に強いのではないかと国民は期待していた。

 だが、いまいち行動に理念が感じられず、支持は低下の一途をたどり、すでに危険水域に達していた。

 阿藤総理は、何か危機が欲しかった。

 なんでもいい、なるべく衝撃的なものを、だ。

 悪化した経済を回復させるという仕事は時間がかかり、インパクトが弱い。

 拉致問題、年金記録問題、テロの問題、教育再生、どれもこれも大事だが、大きな進展や解決まで総理でいられる気がしない。

 今、なにか強力な危機がおこり、それをうまく乗り越えることができたら支持率はうなぎのぼりになるはずだ。

 ――そう思っていた。

 阿藤総理は、頭を抱えながら壁を見つめた。

 ロンドン・サミットは、お休みせねばならんな。

 ニ月にアメリカへ行ってきた帰りに、流れ星に“そんなこと”をお願いするんじゃなかった。

 まさか、そのまま“流れ星”が落ちてくるとは。

 ひたいに冷たい汗が流れた。

 ついでに股も冷たい気がする。

 知らぬまに失禁していたらしい。

 阿藤総理はあわてて着替えを取りに行った。





 四月一日。

 政府は大混乱していた。

 当日になっても、有効な対策は打てずじまいだった。

 テレビではマスコミが巨大隕石の騒ぎをしている。

 市井でも、ネットでも大騒ぎだ。

 総理大臣官邸では、結局何もできなかった阿藤総理が頭を抱えていた。

 とりあえず、平静を保つように会見を開いたが、もはや打てる手はなかった。

 時間がなさすぎたのだ。

「もう駄目かもしれん……。あらゆる手段を考えてみたが、どうにもならん。弾道ミサイルならスタンダードミサイルSM-3とパトリオットPAC-3でなんとかなるかもしれんが、隕石では……」

 バカヤローと叫んで、なにもかも投げ出したい気分だった。

 その時、執務室に一人の男が入ってきた。

「総理! あきらめてはいけません! あきらめたらそこで負けです!」

 総理は、突っ伏していた机から顔を上げて、その声の人物を見た。

「お、おお、君は、国防自衛軍の早畑少佐ではないか」

「お久しぶりです総理。あきらめず最後まで戦いましょう。隕石ごときで、ああそうですかと滅びる日本ではありません。今こそ我が国の底力を見せようではありませんか」

 早畑少佐は、目に力のある男らしい表情でそういった。

 国防自衛軍のエリートである早畑少佐は、隕石への対処について総理へ説明するのを嫌がった防衛大臣から急遽よばれたのだ。

「早畑君……そうだな、私があきらめてはいかんよな。最後まで考えられるあらゆる手段で阻止しなければならない」

「その通りです」

「しかし、さきほどアメリカのアベベ大統領と外交ホットラインで電話会談したが、もはや打つ手がないらしい……。君は名案でもあるのかね? そうだ、あれかね木星にエンジンでも付けて隕石にぶつけるかね?」

「さすがにそれは……」

 早畑少佐は総理のヘタなジョークに呆れたが、愛想で少しだけ口元を歪めて笑った。

「はっきりいって我が国防自衛軍にも阻止する力はありません。しかしながら、我国には昔からいくつもの特殊機関が設置されており、最悪の事態と危機に備えて研究を続けております。今こそ各機関に緊急迎撃命令を出す時です」

「うーむ、特殊機関か……。私でさえよくわからん機関もあるのに、そんなものに未来を預けなければならんとは、いかがなものか……」

「そんなこと言っている場合ではありません!もはや一刻の猶予もないのです。今こそ注ぎ込まれた莫大な税金を、いや研究費を返してもらう時です」

 早畑少佐は異様にテンションが高い。

 その勢いにおされた阿藤総理は、苦渋の表情で決断した。

「やむえんな、各機関へ緊急迎撃命令を発令する!」





つづく





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(・e・) 本来のエイプリルフール企画用だったやつ。
     余裕ぶっこいてたら、書く時間がなくなってしまった。
     やっぱ書くことにしました。
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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
これだったのね。
政府レベルの話だったんだ。よりによって、落ちるのが東京とか、縁起でもないわ。特殊機関の研究てなんだろ。自由研究とか。
つる
2009/04/23 01:18
同じお題でも、一味違って新鮮です。
とんでもない機関がでてきそうで
期待が高まりますね。

sora
2009/04/23 11:51
はてさて、どうなることやら。各機関にどんな妙なのが出てくるかも気になりますが、何よりも気になるのは隕石が何で出来ているか。発泡スチロール並みにスカスカの隕石など・・・いや待てよ、正確には隕石でなく物体。ここがポイントなのか。しかしその先がわからない。
ともかく未知の物質で出来ているようなので、何が起こるかは予想も付かないです。わくわくします。(不謹慎?)
アッキー
2009/04/23 22:41
おお、本格SFだ! 小松左京みたい!
と思ったら、みんなちょっとセコイ(笑)
がんばれ阿藤総理!支持率上がれ、べらんめぇ!
不意打ちで『アベベ大統領』を食らって、本名が思い出せなくなりましたw
ia.
2009/04/24 01:51
>つるさん。
うん。オチとしてマクロな方も書くというやつ。
たぶん、自由研究みたいなもんかな。現実も費用対効果の悪いことやってそうだが。
火群
2009/04/24 08:23
>soraさん。
真面目、真面目、真面目、バカ。
という4連コンボ。
火群
2009/04/24 08:30
>アッキーさん。
神様が地球をでかい釣堀にする予定なので、超巨大マグロが落とされる。

というオチが、今パッときた。

――うーん……違うな……。
やっぱ、予定通りに、つづく。
火群
2009/04/24 08:50
>ia.さん。
ブラックホールじゃなくて良かったな人類(笑)

最近の総理は危機に小躍りしてそうで、困ったもんだ。
アベベはねぇよなー。
火群
2009/04/24 08:59

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