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zoom RSS 『世界が終わるまでは』 (2)

<<   作成日時 : 2009/04/28 01:42   >>

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 時は来た。

 秒針は静寂を命じていたが、早畑少佐はひっきりなしに飛び込む通信に耳をかたむけていた。

 国防自衛軍司令部に戻る時間はなく、総理官邸地下の危機対策本部で連絡役として残ることになったのだ。

 本部の後方、ひときわ豪華なイスには阿藤総理がどっしりと腰をかけて、葉巻を吸いながら、いくつものディスプレイを見つめている。

 電子機器が満載されているので禁煙なのだが、官房長官や秘書官のしかめ面を尻目にプカプカと煙が漂わせる。

 わざとらしい余裕を見せる総理を見て、早畑少佐は苦笑いをした。

 この危機を堂々と指揮し、敢然と乗り越えられれば、総選挙で大勝はまちがいないと、阿藤総理はついさっき執務室で豪語していたからだ。

 数時間前は、死にかけみたいな捻じ曲がった顔をしていたのに、開き直ったのか、諦めたのか……。

「総理、市ヶ谷から観測結果が来ました。あと1分ほどで大気圏に突入してきます」

「……そうか。それで脱出用の空挺部隊はいつ来るんだ?」

 いちおう諦めたわけではないんだなと早畑少佐は思ったが、同時に今さらなにをいいだすのかと呆れた。

「五分はかからないでしょう。ですが、地上に落ちてしまったら、マグニチュード8クラスの局地地震が起こります。さらに巨大な衝撃波が東京中のほとんどの建築物をなぎ倒し、地割れと断層が地表を分断、さらには巻き上げられたすさまじい土砂で太陽は遮られ、夜の闇と化すでしょう。おそらく破壊力は水爆の数十倍、逃げる時間はありません」

「なるほど、もはや君らの迎撃と、特殊機関の奮闘に一分の望みを托すほかはないわけか……」

 すでに米軍の大気圏外での迎撃が失敗しているのを考えれば、国防自衛軍の迎撃には期待できないだろうと早畑少佐は思った。

 耐えられそうもない沈黙が本部を支配して、誰もがもう駄目だと思ったとき、緊急通信が入った。

「箱根方面から特殊機関の迎撃兵器が到着しました! ――ヤバンゲリヲンです!」

「……ヤバンゲリヲン!? なんだそれは!?」

 阿藤総理が怪訝な顔をした。

「詳細はよくわかりませんが、国連の機関が建造した巨大人型兵器です。未知の防御フィールドが展開できるそうで、今から隕石を受け止めると言っています」

「バカな。ありえん!」

「お気持ちはわかります。ですが、もはや我々には傍観することしかできません……」

「……うーむ」

 ひときわ大きなディスプレイに地上の中継が入り、数十メートルの紫色の巨人が命中地点に走っていく光景が映し出された。



 いかつい顔をした巨人は、建物を避けながら命中地点に急いでいた。

 満開の桜並木を飛び越え、器用に電線に引っかからないようにひた走る。

 道路は陥没したし、橋は落としたし、いくつか建物を傾け、さらには途中で国防自衛軍の戦車を何両も踏んでしまったが、そんなのは気にしてられない。

 隕石が人類の敵ならば、あらゆる犠牲はやむえないのだ。

 世界を脅かす存在はすべて蹴散らさければならない。

「そうだ。逃げちゃダメだ」

 パイロットはそう念じた。

 命中地点は、住宅地ではなく、避難済みの商業地区だ。

 強力な不可視のフィールドが展開されて、人型兵器は腕を上げ受け止める姿勢に入る。

 ショッピングモールを蹴り崩して、全力で踏ん張った。

 空に不吉な紅の光が見えて 大気が蠢動し、雲が割れ、巨大なものが突入してきたとき、パイロットは、やっぱり逃げようと思った。

 だが、どうやら内蔵電源がなくなる寸前だった。


 ――その瞬間、閃光と爆発が東京を支配した。


 そして……。

 ヤバンゲリヲンは、隕石の受け止めに見事に成功した。

 マッハ2の破壊力と爆発にフィールドが耐えきったのだ。

 ――これで人類は救われた。

 中継を見ていた総理と早畑少佐、さらには日本中、世界中がそう思った。

 爆発による煙がおさまるのを、全世界が固唾を呑んで見守った。

 どうなったんだ。

 風が吹き、煙が薄くなっていく。

 隕石の残骸を抱えたヤバンゲリヲンの勇姿が見えるのを誰もが期待した。

 だが、実際には、電源の切れたヤバンゲリヲンを下敷きにして、ヤバンゲリヲンにも劣らない巨大な何者かが、その上に直立不動で立っていたのだ。

 そのとき、すさまじい地響きとともに、その何者かが、けたたましく笑い声を発した。

 それは全人類の脳に直接話しかける精神感応波(テレパシー)のようなものだった。

「うはははは。我こそは、恐怖の大王! 10年遅れてごめーんネっ!」

 総理官邸地下本部と、全世界を、取り返しのつかない痛い沈黙が覆いつくした……。







つづく。




―――――――――――――――――――――
(o^v^o) ちょっと仕事が忙しくなってきたので遅れちった。連休なんか嫌いさ。
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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
まさかのロ、ロボット戦隊もの!
そして……展開、早っ!
そういえば今年は2009年でしたね。
恐怖の大王、意外といい人そう?
イマドキ「我こそは!」って ( ´艸`)
ia.
2009/04/28 02:30
な、なるほど、人型だったのか。だから体重が60万トンなんですね。「隕石のようなもの」と聞いて、勝手に球体だと思いこんでいました。私もまだまだ考えが浅い。
それにしても・・シ●ジ君、何やってんですか(爆笑)。ヒーローも怪獣も一般人からすれば脅威だそうですが、確かに野蛮。桜と電線は大事にするくせに。もう笑えて仕方がない。
未知の物質どころか未知の存在。あれで無傷とか。むしろ逃げなきゃダメだ。といっても逃げられないか・・?
アッキー
2009/04/28 13:59
>ia.さん。
だんだんと、壊れてきた(笑)
ゆっくり進行してると忘れちまうまう。
やはり、大王ってくらいだから礼儀正しいのかもしれない。
火群
2009/04/29 01:02
>アッキーさん。
でもホントは重過ぎ。もし大王が生物だとすると自重で瞬時に死ぬ(笑)
まー、おまえのほうがよっぽど危険だろっ、ていうヒーローは幾多も存在するからねぇ。
しかも、よく考えればヤりすぎじゃね? ってな手段で敵にトドメをさす^^
火群
2009/04/29 01:21
ちょっ!10年とか、遅すぎだから!
ヤバンゲリヲンだけでもビックリなのに、もっとビックリしちゃった。
全然関係ないけど、ヤバンゲリヲン、操縦してみてぇ!
つる
2009/04/30 23:20
>つるさん。
わかりづらいネタでゴメンス。
我ながらアホとしかいいようがナス。
どうすんだろねー、この話のオチ ≧◇≦
火群
2009/05/03 00:08
ヤバンゲリヲンがやられてしまったので、
次回は戦隊(選対)ヒーローはいかがでしょ?
sora
2009/05/05 01:23
>soraさん。
遅レスもうしわけない。
戦隊(選対)ー? 面白いけど、どんどんヤバくなるって^o^
火群
2009/05/08 17:40

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