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zoom RSS 『夢織りの娼婦』(5) 白薔薇都市ニルダ

<<   作成日時 : 2007/09/14 22:56   >>

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 僕は、手間のかかる手続きをして、騎士団本部にある地下資料室へ向かった。白い騎士とはいったい何者なのか。困難かと思ったが、意外にも、それは、すぐに判明した。
 ――白い騎士は、個人ではなかったのだ。
 白い甲冑は、ニルダの騎士が遠方への任務につくときに、指揮官が着用するものであったようなのだ。ちょうど、カーラが救い出された十年ちょっと前に、短い期間のみで廃止になった制度である。どうりで知らないはずだった。
 白い甲冑は、外観は良いのだが、指揮官が目立つと敵の集中攻撃にあう恐れがあるので、治安の悪化と共にやめたものらしい。
 カーラは、たまたまそれを、ある一人の騎士だと思い込んでしまったようだ。
 カーラを救った騎士は、特定不可能だった。奴隷交易の商人取り締まりは、年中おこなわれているし、当時、同じことをした騎士は何十人といることだろう。カーラだけが特殊な状態で救われたわけではないのだ。毎年、大勢の女子供が救われている。新米の僕も、いずれその任務に参加することだろう。
 そこで、僕は思い出した。
 歓楽区の治安任務につく初日のことである。僕はそのとき、非常に目立つ、真っ白な鎖かたびらを着ていたのだ。
 それは我が家の家宝であり、代々騎士の初仕事に着ることになっていた。おそらくその僕の姿を、カーラは見かけたのかもしれない。
 僕に近づいたのは、なにかの手がかりを得るためか、もしくは、僕に白い騎士の幻でも見たのか……

 翌日。僕は会いたかったが、会いたくなかった。
 もちろん、今日が最後となるかもしれないから――
 
「ロイエさま。やがて、私は高級娼婦となって、末端ですが、貴族階級のようにあつかわれるようになりました。しかし、都市には白い騎士など見かけることはありませんでした。客の貴族たちも、聞いたことがないといいます。あの日の、白い騎士は、私の見た夢だったのでしょうか?」 
 それはそうだ、今の腐敗した貴族の馬鹿どもに、軍制の知識などかけらもないだろう。覚えていても、娼婦など見下している彼らが、真実を話すことなどない。

「カーラどの……」

 僕はぎりぎりまで迷った。だが、やはり話すことにした。
 この世には、知らないほうがいいこともある。それはわかっている。でも、彼女はもう、過去の呪縛から逃れるべきだと思った。借金はすでになく、逆にある程度の資産が貯まっていることだろう。
 彼女のような心根の純粋な娘が、娼婦などしているべきではない。幻を追いかけて今を無駄に生きるべきでもない。
 僕のエゴも、過分に含まれているが、僕はどうせ不器用な男だ。
 騙してまで、彼女といることなど出来なかった。

「嘘、ですよね……」
「いえ、それが真実なのです……」

 カーラの憂いの瞳が曇りだし、やがて大雨を降らしはじめた。酒場を飛び出していった。
 僕は追ったが、彼女は娼館へと入っていってしまった。
 いつまでも、僕は、立ち尽くしていた。
 僕は白いどころか、残酷で、ろくでもない、灰色の騎士――


 数日が過ぎても、彼女からの連絡はなかった。
 僕にも連絡する勇気はなかった。
 しばらくすると、騎士としての仕事が増え始め、やがて僕は、心のどこかに彼女への想いを追いやって、日々を消化していった。
 そして、三ヶ月ほどが過ぎたころ、王国騎士団創設三百周年が近づき、僕も一応は新米ではなくなり、パレードの準備にいそしんでいた。

「ロイエ。君に何か送られてきたぞ。はは、隅におけないな」

 仕事を終えて、歓楽区にある駐屯所に戻ると、先輩の騎士からそう言われた。テーブルの上には大きめの木の箱があった。
 頭を殴られたような気がした。封じ込めようとしていた想いが一気に噴出し、疲れも眠気も去っていった。
 そこには覚えのある女性の名が、小さく書かれていたのだ。
 開けてみると、中からは、なにかが書かれたカードと、大きな布が見えた。

 三日後、僕はパレードの中にあった。
 騎士団創設三百周年記念の最大の見せ場、歓楽区の中心路を、数十人の騎士で行進する。
 僕は、かなり目立っていることだろう。
 僕の背には、純白の外套が羽織られていた。終わったあとで、上官に大目玉を食らうのは確実だ。
 だが、それも気にならなかった。僕の視線の先には彼女がいた。
 沿道に集まる市民の中に、娼婦の服装ではない彼女が。

 カードには、一言しか書かれていなかった。


「私の白い騎士さまへ」






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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
少し矛盾が発生しまして、途中で一回書き直しました(汗)修行不足につきる。
このおバカさんに、だれか適当な感想を。しかし、地味な話になったなぁ……
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
祝・脱稿!お疲れさまです。白い騎士はロイエのパパと踏んでましたが見事にハズレ……。まさか集団とはやられた。火群さん、考えてますねぇ。ラストがハッピーエンドでよかったです。
sora
2007/09/14 23:41
(わからないように静かにお邪魔しています)。
火群さん、まずはおめでとうございます。愚かな私は、やっと火群さんの目指すものが見えてきました。これまでの非礼をお許し下さい。また参ります。どうぞ学ばせてくださいね。乾杯!
だっくす史人
2007/09/15 00:08
soraさん、どうもありがとー。
>パパ
途中で浮かびましたよー。でも、あくまで対等の恋にしたかった(臭っ!) しかし、つくづく小説は深いよなー(溜息)
火群
2007/09/15 01:26
だっくすさん、こんばんは。
ありがとうございます。非礼? そんなの別にいいんですよ。普通であればいいのです。
コメントをいただけるだけでも、十分ありがたいですよ。
火群
2007/09/15 01:44
火群さん、祝50個おめでとうございます☆
私も見事に読みが外れてしまいましたぁ。。
でも、カーラにとっては昔も今も、白い騎士は一人だけしか存在しなかったってことですよね♪ 
これからもステキな小説を楽しみにしています!!(≧ω≦)
ふじまっと
2007/09/15 05:03
ふじまっとさん、ありがとうございます♪
拙文読ませて申し訳ないです。
>昔も今も、白い騎士は一人だけ
読み汲んでもらえて嬉しいです。
いろいろ書いてみたいですが、文章って、ホントにムツカシイものですね。コメントありがと☆
火群
2007/09/15 10:40
こんにちは。
女性の思い込みの強さを感じました。
でもその思いがロイエを本当の白い騎士に成長させるのでしょうね。
つる
2007/09/18 21:53
つるさん、どうも。相互に成長を伴う恋愛っていいですよね。
ところで、この前、つるさんとこ見たら、コメント欄が荒れてたので、おお〜♪って思いましたよ(スイマセン)。でも、頑張ってる女性が注目される世の中のほうが健全ですからね(持論)心が折れないレベルで“適当”にファイトです。
ちなみに、うちは今月しばらく更新は止まるか、鈍りそうです。仕事が忙しすぎ……。連休無し。_| ̄|○
火群
2007/09/19 00:57
そうなんです。
コメントにびっくりさせられました。もっとユーモアのセンスを磨かなくてはシャレたコメ返しもできません。次回は援護射撃をお願いします。

更新が滞るかもてアナタ!わたしの楽しみが減るじゃあ〜りませんか。どうしてくれましょう。
つる
2007/09/19 20:06
>つるさん
僕の豆鉄砲だと、火に油ですよ(笑) じゃ、今度みたら、手榴弾投げ込んで逃げようかな(←最低)
社交辞令でも、ありがとうございます♪
余裕のあるときお邪魔しますね。では、また〜。
火群
2007/09/20 01:27
なるほど、白の美しいお話で、おしゃれですね!
そこに彼女の純愛が際立ってて、いい感じです。
応援のポチッと。
銀河系一朗
URL
2007/10/02 16:06
銀河系一朗さん、どーも、こんばんは。
僕は、直感と雰囲気ばっかりで書いてるので、読みにくい文章だったと思います。ホント拙作に感想すいません。
なかなか上達しなくて苦戦中です(笑)
火群
2007/10/02 23:24

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